REPORT

京音 -KYOTO- 2017(2017.02.18)@ KYOTO MUSE・磔磔

文 / 山田克基・稲本百合香・森下優月
写真 / 久田元太・kyosuke okuda

2会場同時開催という初の試み。京音-KYOTO- 2017の2日目は京都磔磔と京都MUSEに総勢14組のアーティストが集まった。お目当てのアーティストはもちろん、新たな音楽との出逢いを求めて沢山のオーディエンスがそれぞれの会場に足を運んだことだろう。ベテラン勢からネクストブレイクアーティストまで約7時間かけて刻んだ音楽の足跡をしかとご覧あれ。

ダイジェストムービー

 

 

▼磔磔

象の背

この日の磔磔トップバッターは、ガールズスリーピース・象の背。Gt.Vo.佐藤のかわいらしい声を生かした甘酸っぱい歌詞と、それでいてポップと呼ぶにはどこか不穏な空気のメロディー進行を持ち合わせた一癖あるバンドである。”いいよ”が始まると、音源で聞くよりも骨太で力強い音に惹きつけられる。飾らない実直な演奏というのは、聴き手の心にスッと入ってくるのだなと実感する。MCでは、メンバーの入れ替わりがあったこと、ステージに立つのはこの日が久しぶりであることを話し、聴衆へ感謝の言葉を向ける。そのあとの”ライクユー” “春”の佐藤は上を見上げ噛みしめるように歌っていたのが印象的で、瞳がうるんでいるように見えた。表立って感情には出さなくとも、メンバー全員思うところがあったに違いない。3人の静かな感情の昂ぶりは、確かな熱をもってフロアを満たした。この日が良い日になることを予感させるような、そして3人のこれからを応援したくなるようなステージだった。

 

 

Nulbarich

続いて入場規制で満員のフロアに登場したのは先日初のワンマンライブを成功させたばかりのNulbarichだ。驚くことに彼らはまだライブを始めてから1年も経っていないという。恐ろしい訴求力だが、これは彼らの音楽を聴けばすべて納得できる。ステージに上がった彼らはまずドラムとピアノのセッションでその日のお客さんの感触をつかんでいく。全体的な音楽的技術は非常に高いのだが、何よりも目を見張るのはVo.JQだ。ひょうひょうと歌い上げているように見えるが、息遣いさえもグルーヴィーに感じるほどその歌で会場を躍らせているのが分かった。MCの中では感情を出すのが苦手なようだが、非常に感極まっているというJQ。最後のMCで今までの活動の事や最後に演奏される”LIFE”への想いを語った。音楽だけでも十分だった僕たちだが彼の心の隙間を少し見られたようでさらにNulbarichの音楽に陶酔し完全に一体となって最後まで体を揺らす。ステージとフロアとの繋がりは演奏の終わった後の長い長い拍手からもその強さが実感できた。

 

 

SAPPY

京音 -KYOTO- vol.05にも出演した神戸発のSAPPYが今回も登場。1曲目“Magic hour”から紅一点Voさっぴの突き抜けるような歌声とポップなサウンドで一気にフロアはキラキラとした雰囲気に染められていく。女性ヴォーカルから届けられる歌は特に同世代の女性が共感しやすいということも一理あるが、フロアを見渡すとそんなことは関係ないようだった。フェスさながらの幅広いオーディエンスに包まれながらメンバーのテンションも高まっていく。絶好の環境の中“DANCE XX”でコールアンドレスポンスを促し、自分たちのフィールドにステージ序盤からしっかり引き寄せていた。中盤では「10代の時に聴いた音楽はあなたの中にあって、あなたの歴史になると思うんです」といったMCとともに“Teenage pops”を披露し、若手バンドでありながら次世代へ伝えたい想いをしっかりとバンドとして表現。ライブは楽しむだけでなくアーティストからのメッセージ性もステージ毎にあるということを教えてくれたように思う。

 

 

踊る!ディスコ室町

2015年RO69CKJACK2015入賞に2016年のフジロックのROOKIE A GO-GO出演など近年その名を日本中に轟かせている踊る!ディスコ室町。伝統ある磔磔のステージに登場すると恒例の口上から”嘘800”で深い縦ノリのリズムからずっしりと会場を温める。そこから”ODORUYO~NI”で今度はテンポアップして会場をダンスの渦に。3曲目が圧巻でホーン隊をゲストに招き”NEW CLASSIC DANCE NUMBER”を披露。ファンクをベースにしつつも各曲で全く違う色を見せてくる。Vo.ミキクワカドだけでなく、Tamb.のモチヅキ・タンバリン・シャンシャンもフロントマンとして別角度でフロアを煽ってくる。今までは京都の若手という印象が強かったが、短い時間の中で様々なアプローチで大人の魅力を見せてくれた。経験も踏み、これからさらにその音楽性の幅を広げていくのではないだろうか。

 

 

ハンバート ハンバート

2016年、15周年を記念したアルバム『FOAK』が話題を呼んだハンバート ハンバート。バイオリンや鈴を鳴らしながら楽隊のように登場した彼らは”N.O.” “小さな恋のうた”など、遊び心たっぷりにポップナンバーのアコースティックアレンジを披露し会場を沸かせる。どのバンドもそうだとは思うが、特に彼らのフェスでの選曲は、ワンマンライブに比べ大衆色が色濃く出ているように思う。静と動でいえば「動」、陰と陽でいえば「陽」の要素が強く感じられた。だからこそ新曲”横顔しか知らない”、代表曲”おなじ話”は、「静」の要素として全体を締める上で重要なエッセンスになる。消え入りそうなハーモニカの音、微妙に嚙み合わない2人の問答に静かに胸を締め付けられる。夫婦漫才のようなおとぼけMCに爆笑し、楽曲でじんわりと心を温められる、そんな多幸感に包まれたステージに終わる頃には誰もが笑顔になっていた。

 

 

フライデイフライデー

磔磔のトリ前という重要な役割を担ったのは、2016年春結成の若手バンド・フライデイフライデー。3/8 (水) に1stミニアルバム『フライデイフライデー』が全国発売され、まさにこれからというバンドだ。管楽器を含む6人編成のこのバンドは、フレッシュな空気を纏いつつ妙な落ち着きや貫禄も持ち合わせており、それが楽曲に不思議な説得力を与えている。このバンドの要と思われるのは、不思議な存在感を持つVo.Key.こだま。澄んだ瞳が印象的な彼女の声は透き通って愛らしく、それでいて甘すぎず、掴みどころがないが聴くほどクセになる何かを持っている。また、印象的だったのは”Wander around”で夜の磔磔に放ったスローテンポのメロウな楽曲。終始艶やかなサックスの音色に酔いしれた。アルバム1曲目”おはよう”の明るさがそのままバンドのイメージと捉えられがちだが、この日の彼らはそれだけではない顔も見せてくれた。今後さらに活躍するであろう彼らの可能性を感じ楽しみになった30分間だった。

 

 

fox capture plan

磔磔の大トリは2017年1月からのクールのドラマ『カルテット』の劇中音楽を全て担当している事でも話題になっているfox capture planだ。現代版ジャズロックを提唱し、ピアノ、ベース、ドラムの3人からなるインストバンドである。一曲目の”Butterfly effect”から会場をしっかりと自分たちの世界に引きずり込んでいく。最近のこういった形式のバンドとは一線を画すようにしっかりとしたジャズの地力がある事をその音でもって僕たちにアピールをする。地を這うようなベースラインが手数の多いドラムと踊るピアノをしっかりと支える。曲中でのブレイクごとにフロアの鼓動もどんどんテンポアップしていくのが見て取れた。Pf.のRyo Kishimotoは京都出身だが磔磔への出演経験なく、憧れのステージだったそうだ。自身の凱旋公演に心躍るように演奏もどんどん熱を帯びていく。ドラムもまた高速のフレーズが頻出するが、シンバルのサスティンが短いため一打一打が小刻みにしっかりとビートとして鼓膜を揺らす。時折エフェクティブな音も盛り込みつつ、めくるめくドラマを展開していくのはインストバンドならではだろうか。最後の”the Gift”まで一瞬の出来事のように過ぎ去っていったが、この一瞬の衝撃は2017年更なる衝撃を生み出すに違いない。

 

 

 

▼MUSE

KanSano

キーボーディストでもありトラックメイカー。音楽界のマルチプレイヤーKanSanoがこの日はアーティストとして自身3年ぶりとなるツアー初日に京都にやってきた。彼が初っ端から作り出すのは思わずウネりたくなるような心地良いグルーヴ感だった。Dr.今村慎太郎とのデュオ編成でも自然とバンド感が現れていて彼のステージ上の適応能力とアレンジ力の高さが覗えた。さすがUAや藤原さくらなど有名アーティストのサポートミュージシャンとして多彩なステージを経験しているだけある。終盤に披露した“Magic”ではアッパーな旋律に彼特有のちょっぴりセクシーな甘い歌声が乗る。これが大人の色気なのだろうか。じっとステージを見つめて聴き入るオーディエンスたちは良い意味で最後までこの場から動けなくなっていた。「40分間という限られた時間から覚めないで欲しい」と願ってしまうくらい心地良い余韻に包まれ、ここから続くイベントの期待が膨らんだ。

 

 

POLPTOM

「ポルプトム は提坂 と 武田啓希 のユニットです」といった最低限のプロフィールに妙な好奇心を掻き立てられる。彼らが姿を見せたステージを目の当たりにするとミステリアスな電子音に場内が包まれていく。彼らがマイクやドラム、パソコンに向かう度に「次はどんな音が飛び出すのだろう」とオーディエンスは期待を寄せていく。“傀儡のタイル”で決して多くはないリリックで貴重な歌声を発すると哀愁漂う何とも言えない穏やかさに聞き入ってしまう。……と思いきや、次に目に飛び込んできたのはGt / Vo.堤下がなにやら手を大きく動かしている……!これは彼なりの何らかのメッセ―ジなのだろうか。なんだか掘れば掘るほど気になる存在になってくるのがまたミソだなぁ。彼らのステージを目撃した人のみ伝わる魅力があるのだなと実感したのはきっと私だけではないはずだ。

 

 

Polaris

結成17年目をむかえるPolarisは、貫禄のステージであった。”Slow Motion”が始まると、リズム隊がしっかりと組んだ土台の上を、Gt.Vo.オオヤの紡ぎ出す音が悠々と滑ってゆく。心地よい横ノリが特徴の彼らだが、フロントに立つオオヤは演奏中あまり動かない。歌う間は歌に気持ちを集中させていることもあるのだろうが、観客にノリを提示する部分はBa.柏原とDr.川上に任せている感じがする。それは、過度なパフォーマンスで補わなくても100%すべてを音に乗せて届けられるという彼らの自信の表れなのかもしれない。自分たちが持っているものはすべて音に注ぎ、あとは聴衆に身を委ねる。紡ぎだす音楽への自信と、聴衆への信頼がなければ成り立たない特別な空間だと感じた。夕暮れ時に始まったステージは”深呼吸”、”瞬間”と、宵闇に身を預けて踊り出したくなるような楽曲たちで夜へとバトンを繋いだ。

 

 

ベランダ

まるで休日の午後の昼下がり。ベランダから陽が差し込んでいるような穏やかな情景が1曲目“早い話”を聴いた瞬間から自然と脳裏に浮かんでいく。前月にリリースしたばかりのNewAlbum『Any Luck to You』からの収録曲を中心に楽曲を披露。しっかりとフロントマンとして聴かせどころを主張するGt / Vo.高島、終始はにかみながら穏やかに楽器に向かうBa/ cho.中野、安定したサウンドで2人支えるGt /cho.金沢の様子からバンドとしての程良いバランス感とキャラクターが充分に表れていた。身体を揺らして特別盛り上がるわけでもなく、一直線に届けられる彼らの音楽は「このフレーズがどうだった」とか「このパートのこういった部分が良かった」とか難しいことは考えずとも、ただただ純粋に音楽に触れる時間を終始わたしたちに届けてくれていたように思う。

 

 

bonobos

さてイベントも後半に近づいてきたMUSEのステージに登場したのは、昨年結成15周年で2年ぶりのアルバムをリリースしたbonobosである。リハーサルから本番へもフランクな雰囲気で超満員のお客さんとの距離を縮める。メンバー一人一人がフロアのお客さんと目を合わせちゃんとコミュニケーションをしっかりとっていたのが印象的だ。bonobosの音楽はレゲエベースのものから音響系のものまで振り幅はかなり広い。ゆったりと体の揺らし方を優しく教えてくれるようなビートで、揺れるほど言葉が体の芯に染み込んでくる。終盤では”Cruisin’ Cruisin’”や”23区”など最新アルバムからも楽曲が披露され様々な表情を見せながら、フロアをダンスと言葉の渦に包みこんでいった。3月に開催される3年ぶりのワンマンツアーも非常に楽しみになるbonobosらしさがふんだんに盛り込まれたステージであった。

 

And Summer Club

疾走感あふれる安定したビートサウンドに、細かい音粒さえも逃さないアクティブなギターが負けじと色を足していく。どこかワンパクな雰囲気匂わせながら、サラりと英詞を並べていくのはGt / Vo.角田だ。大阪発の4人組And Summer Clubがフロア満杯の観客の前で熱量のあるライブを展開していた。演奏こそが自己紹介代わりだと物語るかのように短めの楽曲を限られた時間の中で出来るだけ凝縮して披露していた。終盤“Go Go”を演奏する頃にはバンドとしてのヴォルテージが振れ幅を超えていたようだ。「普段そんな言葉口にしたことないだろ」とメンバーに突っ込まれながら「一緒に歌ってください」とフロントマンが思わず口走っていたのがその証拠だろう。まだ年齢的には若い彼らのようなバンドが野暮ったくもあり、実力あるステージを届けていたことで、彼らに憧れたバンドがまたこれから誕生していくのだな。そんな嬉しい期待さえ覚えたステージであった。

 

SPECIAL OTHERS

手に手にビールを持った観客で溢れ、高揚感に満ちた会場。幕が上がり、一瞬、青に照らされた無人のステージが映る。次の瞬間、パッと照明が点りSPECIAL OTHERSのメンバーがステージへ。そして1音目が鳴らされた瞬間、玄人たちの紡ぎ出す圧倒的な「良い音」に安心をおぼえた観客が身を委ねる。糸が解けては絡まり合うように、パートとパートが重なり合い、別のメロディを奏で、またユニゾンし大きなうねりとなる。彼らのライブを見ていると、4人でセッションをしている小部屋に招き入れられたような気分になる。観客が置いてけぼりというのではない。演奏する彼ら自身があまりに楽しそうなので、きっと彼らは幕が下りてもずっとこんな風に音を奏でているのだろうなと想像してしまうのだ。今日イチの盛り上がりを見せた”PB”は、入場規制にあぶれまいとMUSEの奥までぎっしり詰まった観客が、思い思いに揺れ、ジャンプし拳を上げる様が圧巻だった。そんな熱冷めやらぬままアンコールで演奏される”Uncle John”は、終わりを感じさせ少し切ない。いつまでも拍手の鳴りやまないMUSEの夜は、まだまだ彼らの音楽を欲しているように見えた。

タイムテーブルを何度も眺め、どちらの会場を選ぼうかといった嬉しい迷いとともに、両会場を何度も行き来した人も多かったのだろう。

イベントが進んでいく毎に、入場規制が各会場で起こるという出演アーティストにとっては嬉しい悲鳴も巻き起こっていた。最終タイムテーブルSPECIAL OTHERSの出番が終わり、京都MUSEの幕カーテンが閉まるのが名残惜しい程、多くのひとがここ京都で音楽を求めていることが覗えたこの日。最終日や今後のイベント全体の心地良い期待へと確実に繋げてくれたように思う。

 

”京音 -KYOTO- vol.07”の開催が決定しました!
6.20 tue at METRO
出演アーティスト:
ギリシャラブ (京都)
Colteco (福岡)
The Skateboard Kids (名古屋)
and SPECIAL GUEST..!!


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